研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[日本における携帯電話使用と聴神経鞘腫のリスクについての症例症例研究] epidem.

A case-case study of mobile phone use and acoustic neuroma risk in Japan.

掲載誌: Bioelectromagnetics 2011; 32 (2): 85-93

【目的と方法】 携帯電話使用と聴神経鞘腫に関する症例-対照研究の結果は一致していない。我々は、郵送による自己記入式質問紙を用いて、携帯電話使用と聴神経鞘腫に関する症例-症例研究を行った。日本全国の22病院で同定された全症例は1589であり、その内787症例が(51%)参加した。参照日(診断の1年前および5年前)以前の携帯電話使用時の頭側と腫瘍部位との関連性を分析した。【結果】 診断1年前までの携帯電話の規則的使用に関する全体的リスク比は1.08 (95%信頼区間 0.93、1.28)、5年前までの使用に関しては、1.14 (0.96、1.40) であった。平均で1日当たり20分以上の使用の関して顕著なリスク上昇が認められ、そのリスク比は、診断1年前については2.74、診断5年前については3.08 であった。腫瘍部位とより頻繁に使用する耳とが同側である症例は、より小さな直径の腫瘍であったことが見いだされ、これは検出バイアスの効果を示唆している。その上、腫瘍の左右分布を分析すると、診断5年前までの携帯電話使用の想起に関して、腫瘍の頭側に関係した想起バイアスの効果が示唆された。【結論】 1日当たり20分以上の平均通話時間である携帯電話使用者で見られた顕著なリスク上昇は、検出バイアスおよび想起バイアスの可能性を考慮に入れて注意深く解釈しなくてはならない。しかしながら、このリスク上昇がこれらのバイアスによって全て説明可能であると結論することもできず、携帯電話使用が聴神経鞘腫リスクを上昇させる可能性について結論は保留されている。

研究の目的(著者による)

携帯電話使用と聴神経鞘腫リスクとの関連を調査するため、日本において症例症例研究を実施した。

詳細情報

この症例症例研究には聴神経鞘腫を有する個人のみが含まれ、影響を受けた耳を症例側、反対側を対照側とみなした。

2つの参照日(診断の1年前及び5年前)以前の携帯電話使用を分析した。定常的な携帯電話使用は、6か月以上にわたって少なくとも週1回使用と定義した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (相対リスク(RR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
集団 1 診断の1年前の携帯電話使用;携帯電話の使用開始からの年数: ≤ 5
集団 2 診断の1年前の携帯電話使用;携帯電話の使用開始からの年数: 5-10
集団 3 診断の1年前の携帯電話使用;携帯電話の使用開始からの年数: > 10
集団 4 診断の1年前の携帯電話使用;加重平均通話件数/日: ≤ 1
集団 5 診断の1年前の携帯電話使用;加重平均通話件数/日: 1-3
集団 6 診断の1年前の携帯電話使用;加重平均通話件数/日: 3-5
集団 7 診断の1年前の携帯電話使用;加重平均通話件数/日: > 5
集団 8 診断の1年前の携帯電話使用;1回の加重平均通話時間: ≤ 1分
集団 9 診断の1年前の携帯電話使用;1回の加重平均通話時間: 1-3分
集団 10 診断の1年前の携帯電話使用;1回の加重平均通話時間: 3-5分
集団 11 診断の1年前の携帯電話使用;1回の加重平均通話時間: > 5分
集団 12 診断の1年前の携帯電話使用;日常的な加重平均通話時間: ≤ 3分
集団 13 診断の1年前の携帯電話使用;日常的な加重平均通話時間: 3-10分
集団 14 診断の1年前の携帯電話使用;日常的な加重平均通話時間: 10-20分
集団 15 診断の1年前の携帯電話使用;日常的な加重平均通話時間: > 20分
集団 16 診断の5年前の携帯電話使用;携帯電話の使用開始からの年数: ≤ 5
集団 17 診断の5年前の携帯電話使用;携帯電話の使用開始からの年数: 5-10
集団 18 診断の5年前の携帯電話使用;携帯電話の使用開始からの年数:> 10
集団 19 診断の5年前の携帯電話使用;加重平均通話件数/日: ≤ 1
集団 20 診断の5年前の携帯電話使用;加重平均通話件数/日: 1-3
集団 21 診断の5年前の携帯電話使用;加重平均通話件数/日: 3-5
集団 22 診断の5年前の携帯電話使用;加重平均通話件数/日: > 5
集団 23 診断の5年前の携帯電話使用;1回の加重平均通話時間: ≤ 1分
集団 24 診断の5年前の携帯電話使用;1回の加重平均通話時間: 1-3分
集団 25 診断の5年前の携帯電話使用;1回の加重平均通話時間: 3-5分
集団 26 診断の5年前の携帯電話使用;1回の加重平均通話時間: > 5分
集団 27 診断の5年前の携帯電話使用;日常的な加重平均通話時間: > 5分
集団 28 診断の5年前の携帯電話使用;日常的な加重平均通話時間: ≤ 3分
集団 29 診断の5年前の携帯電話使用;日常的な加重平均通話時間: 3-10分
集団 30 診断の5年前の携帯電話使用;日常的な加重平均通話時間: 10-20分

調査対象集団

調査規模

タイプ
適格者 1,589
参加者 804
評価可能 787

結論(著者による)

全体として、非使用と比較して、定常的な携帯電話使用についての聴神経鞘腫の統計的に有意なリスク上昇は認められず、診断の1年前までの使用についてのリスクは1.08(CI 0.93-1.28)、診断の5年前までの使用については1.14(CI 0.96-1.40)であった。影響を受けた側の耳で携帯電話平均して>20分/日使用していたと報告した症例に、有意なリスク上昇が認められた(診断の1年前のRR 2.74(CI 1.18-7.85)、診断の5年前のRR 3.08(CI 1.47-7.41))。腫瘍の位置と、より頻繁に使用する耳の組合せが同側の症例では、直径がより小さい腫瘍を有することが認められ、このことは検出バイアスの影響を示唆している。更に、左右の腫瘍の分布の分析では、診断の5年前の携帯電話使用について、腫瘍の側に関連した想起バイアスの影響が示唆された。
平均通話時間が>20分/日の携帯電話ユーザーに認められたリスク上昇は、検出バイアス及び想起バイアスの可能性を考慮して、慎重に解釈すべきである。但し著者らは、リスク上昇がこれらのバイアスによって完全に説明可能であると結論付けることはできず、携帯電話使用が聴神経鞘腫リスクを高めるという可能性は残されている。

研究助成

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