研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[長期間の携帯電話使用と聴神経鞘腫のリスク] epidem.

Long-term Mobile Phone Use and Acoustic Neuroma Risk

掲載誌: Epidemiology 2014; 25 (2): 233-241

この研究は、スウェーデンで実施された人口ベース、全国規模の聴神経鞘腫症例対照研究で、携帯電話の長期使用との関連を調べた。適格症例は、2002-2007年に診断された20-69歳の患者とした。対照は、症例と年齢、性別、居住地域をマッチさせて人口登録から無作為抽出された。郵送による質問票に症例451(回答率83%)対照710(同65%)が回答した。携帯電話の規則的使用者群(少なくとも6ヶ月間、1週間に1回以上使用)と参照群(前者より稀な使用または使用経験無し)で比較を行った。その結果、規則的使用者群のオッズ比OR)は1.18(95%信頼区間(CI):0.88-1.59);最も長期の使用群(≧10 年:OR = 1.11)および腫瘍と同側使用群(OR = 0.98)で関連は弱くなった;累積使用時間の最高4分位(≧ 680 時間)のORは1.46(95%CI: 0.98- 2.17)であった;組織学的確定診断がある症例に限定した分析では全てのORが低下し、例えば、≧ 680 時間群のORは1.14(95%CI: 0.63- 2.07)となった;携帯電話の使用頭側の完全な履歴の分析で、側性分析に相当程度のバイアスが存在することが明らかになった、などを報告している。

研究の目的(著者による)

長期間の携帯電話使用と聴神経鞘腫リスクとの関連を調査するため、スウェーデンにおいて人口ベース症例対照研究を実施した。加えて、側性分析において潜在的な逆因果関係の評価を可能とするため、電話使用の側性の履歴についての詳細な情報を収集した。

詳細情報

定常的な携帯電話使用は、少なくとも6か月間に少なくとも週1回の通話発信または着信があったと定義した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 携帯電話使用:経験なし、または稀に使用
集団 2 携帯電話使用:定常的
参照集団 3 定常的な携帯電話使用の期間: < 5年
集団 4 定常的な携帯電話使用の期間: 5-9年
集団 5 定常的な携帯電話使用の期間: ≥ 10年
参照集団 6 最初の定常的使用からの期間: < 5年
集団 7 最初の定常的使用からの期間: 5-9年
集団 8 最初の定常的使用からの期間: ≥ 10年
集団 9 最初の定常的使用からの期間: 10-12年
集団 10 最初の定常的使用からの期間: ≥ 13年
参照集団 11 累積使用時間: < 38
集団 12 累積使用時間: 38 - 189
集団 13 累積使用時間: 190 - 679
集団 14 累積使用時間: ≥ 680
参照集団 15 累積通話件数: < 1100
集団 16 累積通話件数: 1100 - 4400
集団 17 累積通話件数: 4400 - 13850
集団 18 累積通話件数: ≥ 13850

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 542 1,095
参加者 451 710
参加率 83 % 65 %
評価可能 422 643
統計学的分析方法:

結論(著者による)

定常的使用のある症例の52%及び対照の8%が、携帯電話使用の際に好んで使う側を変更したと報告した。症例では、電話使用の側の変更の最も一般的な理由は難聴(91%)で、対照では「実用上の理由」(40%)であった。

携帯電話の定常的使用はオッズ比OR)1.18(CI 0.88-1.59)と関連していた。関連は最も長い誘導期間(≥ 10年:OR 1.11、CI 0.76-1.61)及び腫瘍の側での定常的使用(同側:OR 0.98、CI 0.68-1.43)でより弱かった。累積通話時間が最も高い四分位値(≥ 680時間)でのORは1.46(CI 0.98-2.17)であった。組織学的に確認された症例に分析を限定した場合、全てのオッズ比が低下した(≥ 680時間:OR 1.14、CI 0.63-2.07)。コードレス電話についても同様のパターンが認められたが、ORは僅かに高かった。携帯電話側性の完全な履歴の分析では、側性分析における相当のバイアスが明らかになった。

著者らは、この知見は長期間の携帯電話使用が聴神経鞘腫リスクを高めるという仮説を支持していない、と結論付けている。本研究は、電話使用は聴神経鞘腫の症例が検出される可能性を高めたかも知れないこと、及び、先行研究で実施された側性分析にはバイアスがあったかも知れないことを示唆している。

研究助成

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