研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[携帯電話使用に関連した聴神経鞘腫のリスク:インターフォン国際症例対照研究の結果] epidem.

Acoustic neuroma risk in relation to mobile telephone use: Results of the INTERPHONE international case-control study.

掲載誌: Cancer Epidemiol 2011; 35 (5): 453-464

【背景】携帯電話使用の急速な増加により、それらの機器からの無線周波電磁界健康リスクの可能性についての懸念が生じている。【方法】共通プロトコルによる13ヶ国での調査に基づき、聴神経鞘腫前庭神経鞘腫と同義)と新規に診断された患者群1105人と対照群2145人の症例対照研究が実施された。過去の携帯電話使用については個人インタビューで調査された。主要な分析は参照日(症例では診断日、対照ではマッチされた症例の診断日)の1年前の時点でのばく露時間についてのものである。可能な限り長期の潜伏期を見込むために、参照日の5年前の時点でのばく露についても分析した。【結果】常に携帯電話の規則的使用者であったことに伴う聴神経鞘種のオッズ比OR)は0.85(95%信頼区間は0.69-1.04)であった。規則的使用の開始から10年以上についてのORは0.76(0.52-1.11)であった。累積通話時間または累積通話回数の増加につれてORが増加する傾向はなく、最も低いOR(0.48(0.30-0.78))は累積通話時間の10分位中の第9分位で見られた。累積通話時間の第10分位(≧1640時間)でのORは1.32(0.88-1.97)であったが、累積通話時間が≧1640時間のカテゴリーには、信じがたい値の使用報告が含まれていた。参照日の5年前の時点でのばく露については、規則的使用の開始から10年以上についてのORは0.83(0.58-1.19)であり、累積通話時間が≧1640時間のカテゴリーでのORは2.79(1.51-5.16)であったが、やはり第9分位以下では何も傾向性はなく、第9分位のORが最も低かった。全体として、腫瘍と同じ頭側で通常携帯電話を使用したと報告した人の方が反対の頭側と報告した人よりORsが大きいことはなかったが、累積使用時間の第10分位では同側使用の方のORが大きかった。【結論】携帯電話を常に規則的に使用したこと、または参照日の10年以上前から規則的使用を開始した人において、聴神経鞘腫リスク上昇はなかった。累積通話時間の最高レベルで観察されたオッズ比上昇は、偶然、報告バイアスによるものかも知れないし、または因果的な影響によるものかも知れない。聴神経鞘腫は通常成長が遅い腫瘍であるため、影響がもしあったとしても影響を観察するには携帯電話の導入と腫瘍の発生との間隔が短すぎたかも知れない。

研究の目的(著者による)

携帯電話使用が脳腫瘍リスクを高めるかどうかを判定するため、13か国で国際症例対照研究(インターフォン)を実施した。

詳細情報

インターフォン研究は、13か国(オーストラリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イスラエル、イタリア、日本、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、英国)で実施された、携帯電話から発せられる無線周波エネルギーを主に吸収する組織における四種類の腫瘍神経膠腫髄膜腫聴神経鞘腫耳下腺腫)に焦点を当てた国際的な症例対照研究のセットとして開始された。本論文は、聴神経鞘腫リスクについての分析結果を示すもので、神経膠腫及び髄膜腫リスクについての報告は、以前の publication 18215 がカバーしている。

バイアスの潜在的発生源を検出するため、感度解析を実施した。

携帯電話の定常的使用は、少なくとも6か月間に少なくとも週1回と定義した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 定常的使用:なし
集団 2 定常的使用:あり
参照集団 3 定常的使用経験なし
集団 4 使用開始からの期間: 1-1.9年
集団 5 使用開始からの期間: 2-4年
集団 6 使用開始からの期間: 5-9年
集団 7 使用開始からの期間: ≥ 10年
参照集団 8 定常的使用経験なし
集団 9 累積通話時間: < 5時間
集団 10 累積通話時間: 5-12.9時間
集団 11 累積通話時間: 13-30.9時間
集団 12 累積通話時間: 31-60.9時間
集団 13 累積通話時間: 61-114.9時間
集団 14 累積通話時間: 115-199.9時間
集団 15 累積通話時間: 200-359.9時間
集団 16 累積通話時間: 360-734.9時間
集団 17 累積通話時間: 735-1639.9時間
集団 18 累積通話時間: ≥ 1640時間
参照集団 19 定常的使用経験なし
集団 20 累積通話件数: < 150
集団 21 累積通話件数: 150-349
集団 22 累積通話件数: 350-749
集団 23 累積通話件数: 750-1399
集団 24 累積通話件数: 1400-2549
集団 25 累積通話件数: 2550-4149
集団 26 累積通話件数: 4150-6799
集団 27 累積通話件数: 6800-12799
集団 28 累積通話件数: 12800-26999
集団 29 累積通話件数: ≥ 27000
参照集団 30 同側での携帯電話使用なし
集団 31 同側での携帯電話使用
参照集団 32 定常的使用経験なし
集団 33 同側使用、最初の使用からの期間: 1-1.9年
集団 34 同側使用、最初の使用からの期間: 2-4年
集団 35 同側使用、最初の使用からの期間: 5-9年
集団 36 同側使用、最初の使用からの期間: ≥ 10年
参照集団 37 定常的使用なし
集団 38 同側使用、累積通話時間: < 5時間
集団 39 同側使用、累積通話時間: 5-114.9時間
集団 40 同側使用、累積通話時間: 115-359.9時間
集団 41 同側使用、累積通話時間: 360-1639.9時間
集団 42 同側使用、累積通話時間: ≥ 1640時間
参照集団 43 定常的使用なし
集団 44 同側使用、累積通話件数: < 150
集団 45 同側使用、累積通話件数: 150-2549
集団 46 同側使用、累積通話件数: 2550-6799
集団 47 同側使用、累積通話件数: 6800-26999
集団 48 同側使用、累積通話件数: ≥ 27000
参照集団 49 定常的使用なし
集団 50 反対側使用、最初の使用からの期間: 1-1.9年
集団 51 反対側使用、最初の使用からの期間: 2-4年
集団 52 反対側使用、最初の使用からの期間: 5-9年
集団 53 反対側使用、最初の使用からの期間: ≥ 10年
参照集団 54 定常的使用なし
集団 55 反対側使用、累積通話時間: < 5時間
集団 56 反対側使用、累積通話時間: 5-114.9時間
集団 57 反対側使用、累積通話時間: 115-359.9時間
集団 58 反対側使用、累積通話時間: 360-1639.9時間
集団 59 反対側使用、累積通話時間: ≥ 1640時間
参照集団 60 定常的使用なし
集団 61 反対側使用、累積通話件数: < 150
集団 62 反対側使用、累積通話件数: 150-2549
集団 63 反対側使用、累積通話件数: 2550-6799
集団 64 反対側使用、累積通話件数: 6800-26999
集団 65 反対側使用、累積通話件数: ≥ 27000

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 1,361 14,354
参加者 1,121 7,658
評価可能 1,105 2,145
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

全体として、定常的使用経験あり(グループ2)及び10年以上の携帯電話使用(グループ7)について、聴神経鞘腫リスク上昇は認められなかった。累積通話時間または累積通話件数の増加に伴うORの上昇傾向は認められず、累積通話時間が上から2番目のグループ(735-1639.9時間)で最も低いOR(0.48;CI 0.30-0.78)が観察された。累積通話時間が一番上のグループ(≥ 1640時間)では、ORが1.32(CI 0.88-1.97)であった;但し、このグループではありそうにない値が報告された(例:5時間/日を超える携帯電話使用)。分析を参照日の5年前に限定した場合(携帯電話使用についての可能性のある前駆症状を排除するため)も、同様の結果が観察された。
全体として、腫瘍と同じ側の頭部で携帯電話を通常使用していた(同側使用)と報告した被験者では、反対側使用の被験者と比較して、オッズ比は大きくなかったが、累積使用時間が1640時間以上の被験者では高かった。

著者らは、携帯電話の定常的使用経験あり、または参照日の10年以上前に定常的使用を開始したユーザーには、聴神経腫のリスク上昇はなかった、と結論付けた。累積通話時間が最も高いレベルで観察されたオッズ比の上昇は、偶然、報告バイアスまたは因果関係によるものである可能性があった。聴神経鞘腫は通常、成長が緩慢な腫瘍なので、仮に影響があったとしても、携帯電話の導入と腫瘍の発生までの期間が短すぎて、影響を観察できなかったのかも知れない。

研究助成

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