研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[ヒト神経芽腫細胞株BE(2)Cに対するレチノイン酸及び超低周波磁界ばく露の相乗効果] med./bio.

Synergic effect of retinoic acid and extremely low frequency magnetic field exposure on human neuroblastoma cell line BE(2)C

掲載誌: Bioelectromagnetics 2010; 31 (6): 425-433

この研究は、高リスク神経芽細胞腫の代表であるヒト神経芽細胞腫細胞株BE(2)Cの増殖分化に対する正弦波超低周波磁界(ELF-MF; 50 Hz、1 mT)ばく露の影響を評価した。この細胞株に、神経分化剤(オール・トランスレチノイン酸、ATRA)の存在下または非存在下で、24 - 72時間、ELF-MFばく露を与えた。擬似ばく露群との比較によって影響を評価した。その結果、レチノイン酸とELF-MFの組み合わせばく露群では、レチノイン酸またはELF-MFのいずれかの単独ばく露群に比べ、細胞増殖の低下およびG(0)/ G(1)期細胞の割合上昇が見られた;さらに、組み合わせばく露群では、より分化進行した形態学的特徴(細胞における神経突起数の増加、神経突起長の増加)が見られ、それと一緒に、神経分化に関与するp21(WAF1 / CIP1)遺伝子およびcdk5遺伝子のmRNAレベルの有意な上昇が見られた;さらに、ニューロン分化ストレス応答の両方に関与するcyp19遺伝子発現を評価すると、cyp19遺伝子発現は、ATRA処置によって増強され、ATRAと組み合わせたELF-MFばく露によってさらに有意に増強された;以上の知見は、ELF-MFばく露神経芽細胞腫細胞に対するATRA効果を増強する可能性を示唆する、と報告している。

研究目的(著者による)

正弦波超低周波磁界(50Hz、1mT)ばく露が、リスクの高い神経芽腫の代表であるヒト神経芽腫細胞株BE(2)Cにおいて、細胞増殖及び細胞分化に影響を及ぼし得るかどうかを調べること。

詳細情報

神経分化因子(オールトランスレチノイン酸、ATRA)あり/なしで、細胞超低周波磁界に24-72時間ばく露した(ATRAで処理したBE(2)C細胞は、細胞増殖率及び神経突起伸長の減少を示す)。

可能性のある生物医学的応用を考慮して、神経分化に対する磁界の影響を調査した;細胞分化誘導腫瘍治療の目的の一つである。これは、腫瘍があまり分化していないほど、転移攻撃性がより高いためである。高リスク神経芽腫の治療では、レチノイン酸がしばしば用いられる。これは、レチノイン酸には成長停止と分化を生じる能力があるためである。著者らは、ATRAに対してあまり応答しない神経芽腫の分化を、磁界ばく露が改善し得るという仮説を立てている。

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 24 hr to 72 hr

General information

cells were exposed i) to EMF only ii) to EMF + all-trans-retinoic acid

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • magnetic field
波形
  • sinusoidal
ばく露時間 continuous for 24 hr to 72 hr
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
ばく露装置の詳細 two pairs of Helmholtz coils in a 5% CO2 incubator at a constant temperature of 37°C; coils with a diamter of 25 cm and 2 x 20 turns double wrapped; 11 cm high exposure area with a diamter of 4 cm in the center of the coil system
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 1 mT - 測定値 - -

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

レチノイン酸処理(ATRA)とあわせて超低周波磁界ばく露した細胞は、磁界ばく露のみ、またはATRA投与のみの細胞と比較して、細胞増殖の低下と、G0期/G1期の細胞の比率の上昇を示した。更に、ATRA処理とあわせて磁界ばく露した細胞は、磁界ばく露のみ、またはATRA投与のみの細胞と比較して、神経突起伸長の数と長さの増加を示した。加えて、p21WAF1/CPP1及びcdk5遺伝子発現有意な増加が見られた。Cyp19遺伝子発現はATRA投与によって増加し、磁界ばく露とATRA処理の組合せでは更に増加した。

結論として、このデータは、超低周波磁界ばく露神経芽腫細胞に対するATRAの効果を強め得ることを示唆している。

研究の種別:

研究助成

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