研究のタイプ: 医学/生物学の研究 (experimental study)

[ラットの精子特性および精巣の組織病理学的状態に対する電磁界の影響] med./bio.

Effect of electromagnetic field on the sperm characteristics and histopathological status of testis in rats

掲載誌: Med Weter 2007; 63 (2): 178-183

この研究は、170 kV(50 Hz)の高圧電力線が生成する超低周波電磁界(ELF-EMF)が精巣上体精子の特性、生化学的パラメータ、テストステロンレベル、および精巣組織病理学的パラメータに与える影響を調べた。28匹の成獣の雄ラットを4群(各n =7)に分け、3つのばく露群は、170 kV(50 Hz)の高圧電力線から7.5m離れた小屋に置かれ、それぞれは1、2、3か月間、ELF-EMF(48.21±1.58 mG)への24時間連続ばく露を受けた。対照群は実験室の磁界のない環境に置かれた。その結果、異なるばく露期間に応じて、生殖器の重量、精巣の寸法、精巣上体精子濃度および精子運動性の有意ではない減少、異常精子の出現率の有意でない増加が観察された;血漿および精巣カタラーゼ活性の有意な上昇が、ばく露時間依存的に観察されたが、グルタチオンおよびマロンジアルデヒドのレベルに関しては有意差がなかった;精巣生検におけるJohnsenのスコアに照らして、1、2、3か月ばく露群および対照群平均スコアはそれぞれ、9.24±0.08、8.02±0.12、6.98±0.11、および9.88±0.07であった;精巣組織病理学的検査において、精子形成の減速および生殖細胞の変性ばく露時間の順にしたがって生じることが示された、と報告している。

研究目的(著者による)

ラット精巣に対する170kV電力線から生じる50Hz電界及び磁界の影響を調べること。

詳細情報

ラットを4群に分けた(各群n=7):1) 対照群、2) 1か月間ばく露、3) 2か月間ばく露、4) 3か月間ばく露

影響評価項目

ばく露

ばく露 パラメータ
ばく露1: 50 Hz
ばく露時間: continuous for 24 h/day for 1, 2 or 3 months
  • 磁束密度: 4.821 µT mean (± 0.158 µT; exposure environment)
  • 電界強度: 1.66 kV/m mean (± 0.01 kV/m; exposure environment)
  • 磁束密度: 0.048 µT average over time (± 0.005 µT; in the control environment)
  • 電界強度: 0.75 kV/m average over time (± 0.05 kV/m; in the control environment)

ばく露1

主たる特性
周波数 50 Hz
タイプ
  • electric field
  • magnetic field
ばく露時間 continuous for 24 h/day for 1, 2 or 3 months
ばく露装置
ばく露の発生源/構造
  • power lines
ばく露装置の詳細 rats held in 33 cm x 13 cm x 15 cm Perspex cages placed in a 2 m x 2 m x 1.85 m experimental cottage with a horizontal distance of 10 m from the transformer station and a vertical distance of 7.5 m from the power lines
Sham exposure A sham exposure was conducted.
パラメータ
測定量 種別 Method Mass 備考
磁束密度 4.821 µT mean 測定値 - ± 0.158 µT; exposure environment
電界強度 1.66 kV/m mean 測定値および計算値 - ± 0.01 kV/m; exposure environment
磁束密度 0.048 µT average over time 計算値 - ± 0.005 µT; in the control environment
電界強度 0.75 kV/m average over time 測定値および計算値 - ± 0.05 kV/m; in the control environment

ばく露を受けた生物:

方法 影響評価項目/測定パラメータ/方法

研究対象とした生物試料:
研究対象とした臓器系:
調査の時期:
  • ばく露後

研究の主なアウトカム(著者による)

ばく露ラット対照群ラットでは、臓器重量及び大きさ、ならびに精子濃度、精子運動性及び異常精子の比率に関する有意差は認められなかった。

ばく露ラット血漿及び精巣では、対照群と比較して、テストステロンのレベル及びカタラーゼ酵素活性が有意に低下したが、グルタチオン及びマロンジアルデヒドのレベルには有意差は見られなかった。

対照群ばく露群では、組織病理学的検査(即ち、Johnsonの生検スコア及び胚芽細胞の厚さ)に有意差が見られた。加えて、組織病理学的検査では、ばく露時間に関連した精子形成の減速及び生殖細胞の変性が明らかになった。全てのグループでBaxのタンパク質発現が認められたが、最も強い発現は2か月ばく露群であり、Bcl-2のタンパク質発現は全体的に弱く、最も強い発現は2か月ばく露群であった。

著者らは、170kV電力線から生じる50Hz電界及び磁界は、ラット精巣におけるテストステロンのレベルに影響を及ぼし、組織病理学的変化を生じ得るが、精子の特徴は変化させない、と結論付けている。

研究の種別:

研究助成

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