研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[ハンドヘルド型携帯電話使用と脳のがんのリスク] epidem.

Handheld cellular telephone use and risk of brain cancer

掲載誌: JAMA 2000; 284 (23): 3001-3007

この研究は、携帯電話使用が原発性脳腫瘍リスクに関連するとの仮説を検証することを目的に、1994年から1998年において、米国の5つの大学医療センターで実施された症例対照研究である。症例は、18〜80歳の原発性脳腫瘍のある男女469人、対照は、症例とマッチングされ、かつ脳腫瘍ではない422人。携帯電話の月あたりの使用時間数および使用年数により、脳腫瘍リスクを比較した。その結果、月平均使用時間は、症例で2.5、対照で2.2時間であった;携帯電話の使用経験がない人を参照群とした場合、過去あるいは現在の規則的な使用者群の多変量オッズ比OR)は0.85(95%信頼区間[CI]、0.6-1.2)であった;使用頻度の低い使用者群(10.1時間/月)のORは0.7(95%CI、0.3-1.4)であった;平均使用年数は、症例で2.8年、対照で2.7年であった;使用年数と脳腫瘍との関連は観察されなかった(P = 0.54);症例において、携帯電話の使用頭側の方に脳腫瘍が発生する頻度が高かった(26症例対15症例; P = 0.06);しかし、側頭葉腫瘍の症例に限定した場合、反対頭側の腫瘍の方が同側よりも多かった(9症例対5症例; P = .33);稀な神経上皮腫瘍(OR=2.1; 95% CI, 0.9-4.7)を除き、脳腫瘍の全ての組織学的カテゴリーにおいて、ORは1未満であった、と報告している。

研究の目的(著者による)

携帯電話使用が脳のがんと関連しているかどうかを調査するため、米国において病院ベースの症例対照研究を実施した。

詳細情報

ハンドヘルド型携帯電話の使用は、携帯電話サービス加入にしていることと定義した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 携帯電話使用:0年
集団 2 携帯電話使用:1年
集団 3 携帯電話使用:2-3年
集団 4 携帯電話使用:≥ 4年
参照集団 5 携帯電話使用:0時間/月
集団 6 携帯電話使用:> 0 ≤ 0.72時間/月
集団 7 携帯電話使用:> 0.72 ≤ 2.1時間/月
集団 8 携帯電話使用:> 0.21 ≤ 10.1時間/月
集団 9 携帯電話使用:> 10.1時間/月
参照集団 10 携帯電話使用:累積0時間
集団 11 携帯電話使用:累積> 0 ≤ 8.7時間
集団 12 携帯電話使用:累積> 8.7 ≤ 60時間
集団 13 携帯電話使用:累積> 60 ≤ 480時間
集団 14 携帯電話使用:累積> 480時間

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 571 -
参加者 469 422
参加率 82 % 90 %
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

症例66人(14%)及び対照76人(16%)が携帯電話使用を報告した。携帯電話使用の平均期間は症例で2.8年、対照で2.7年であった。主にアナログ信号で動作する携帯電話ユーザーに脳のがんリスク上昇は認められなかった。データは、携帯電話使用は脳腫瘍リスクと関連していないことを示唆した。

研究の限界(著者による)

長期的なユーザーについては結論を導けない。

研究助成

この論文に対するコメント

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