研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[携帯電話、コードレス電話及び脳腫瘍についてのリスク] epidem.

Mobile phones, cordless phones and the risk for brain tumours

掲載誌: Int J Oncol 2009; 35 (1): 5-17

この論文は、1997-2003年に実施した2つの症例対照研究のデータの再分析である。質問票に回答したのは、悪性脳腫瘍症例905(回答率90%)、良性腫瘍症例1,254(同88%)、人口ベースの対照2,162(同89%)であった。今回は、同側使用を「通話時間が、腫瘍と同側で ≧ 50%」、同側/反対側使用を「同 = 50%」、反対側使用を「同 < 50%」と定義し、腫瘍部位との関連を調べた。主な結果として、星状細胞腫では、同側使用で、使用年数 >10年の場合、携帯電話でOR=3.3, 95%信頼区間(CI):2.0-5.4、コードレス電話でOR=5.0, 95% CI:2.3-11、などを報告している。

研究の目的(著者による)

携帯電話及びコードレス電話の使用と悪性及び良性脳腫瘍リスクについての先行する2つの症例対照研究プール分析をスウェーデンにおいて実施した。更に、スウェーデンがん登録のデータを用いて1970‐2007年の期間の脳腫瘍発生率を分析した。

詳細情報

1997‐2000年の期間に関する最初の症例対照研究は、publications 9520 及び 9895 に、2000-2003年の期間に関する第二の研究は、publications 12068 及び 12259 に発表している。悪性腫瘍についてのプール分析publication 13689 に、良性腫瘍については publication 13049 に発表している。
携帯電話使用は、腫瘍側性に関して同側(通話時間の ≥ 50 %)及び反対側( < 50 %)と定義した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
集団 1 全ての年齢グル―プ、携帯電話、潜伏期間 > 1年
集団 2 全ての年齢グル―プ、携帯電話、潜伏期間 > 1年、同側
集団 3 全ての年齢グル―プ、携帯電話、潜伏期間 > 1年、反対側
集団 4 全ての年齢グル―プ、コードレス電話、潜伏期間 > 1年
集団 5 全ての年齢グル―プ、コードレス電話、潜伏期間 > 1年、同側
集団 6 全ての年齢グル―プ、コードレス電話、潜伏期間 > 1年、反対側
集団 7 全ての年齢グル―プ、携帯電話、潜伏期間 > 10年
集団 8 全ての年齢グル―プ、携帯電話、潜伏期間 > 10年、同側
集団 9 全ての年齢グル―プ、携帯電話、潜伏期間 > 10年、反対側
集団 10 全ての年齢グル―プ、コードレス電話、潜伏期間 > 10年
集団 11 全ての年齢グル―プ、コードレス電話、潜伏期間 > 10年、同側
集団 12 全ての年齢グル―プ、コードレス電話、潜伏期間 > 10年、反対側
集団 13 最初のばく露時の年齢 < 20歳、携帯電話、潜伏期間 > 1年
集団 14 最初のばく露時の年齢 < 20歳、携帯電話、潜伏期間 > 1年、同側
集団 15 最初のばく露時の年齢 < 20歳、携帯電話、潜伏期間 > 1年、反対側
集団 16 最初のばく露時の年齢 < 20歳、コードレス電話、潜伏期間 > 1年
集団 17 最初のばく露時の年齢 < 20歳、コードレス電話、潜伏期間 > 1年、同側
集団 18 最初のばく露時の年齢 < 20歳、コードレス電話、潜伏期間 > 1年、反対側
集団 19 最初のばく露時の年齢 20-49歳、携帯電話、潜伏期間 > 1年
集団 20 最初のばく露時の年齢 20-49歳、携帯電話、潜伏期間 > 1年、同側
集団 21 最初のばく露時の年齢 20-49歳、携帯電話、潜伏期間 > 1年、反対側
集団 22 最初のばく露時の年齢 20-49歳、コードレス電話、潜伏期間 > 1年
集団 23 最初のばく露時の年齢 20-49歳、コードレス電話、潜伏期間 > 1年、同側
集団 24 最初のばく露時の年齢 20-49歳、コードレス電話、潜伏期間 > 1年、反対側
集団 25 最初のばく露時の年齢 50-80歳、携帯電話、潜伏期間 > 1年
集団 26 最初のばく露時の年齢 50-80歳、携帯電話、潜伏期間 > 1年、同側
集団 27 最初のばく露時の年齢 50-80歳、携帯電話、潜伏期間 > 1年、反対側
集団 28 最初のばく露時の年齢 50-80歳、コードレス電話、潜伏期間 > 1年
集団 29 最初のばく露時の年齢 50-80歳、コードレス電話、潜伏期間 > 1年、同側
集団 30 最初のばく露時の年齢 50-80歳、コードレス電話、潜伏期間 > 1年、反対側

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
参加者 2,159 2,162
参加率 89 % 89 %
その他:

悪性腫瘍の患者905人、良性腫瘍の患者1254人

統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

携帯電話またはコードレス電話の使用と星状細胞腫及び聴神経鞘腫との関連が認められた。携帯電話の使用をを20歳以前に開始した人々において特にリスク上昇が認められたが、これは少ない数に基づいていた。髄膜腫及びその他の種類の脳腫瘍については関連は認められなかった。スウェーデンがん登録のデータの分析では、2000-2007年の間に星状細胞腫発生率の上昇が示された。同じ期間に、聴神経鞘腫発生率の低下が認められた。

研究助成

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