研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[電力周波数磁界と小児白血病の研究に対して地磁気は影響を改変し得るか?] epidem.

Could the geomagnetic field be an effect modifier for studies of power-frequency magnetic fields and childhood leukaemia?

掲載誌: J Radiol Prot 2012; 32 (4): 413-418

この論文は、これまでに報告された商用周波磁界小児白血病疫学研究が調査を行った地域の地磁気レベルと報告されたオッズ比の関係を分析し、その地磁気レベルが小児白血病オッズ比の修飾因子のようにみえるか否かを検討した。小児白血病の発症メカニズムに結びつく原因の一つとして、フリーラジカルを含む生物学的反応への磁界(静磁界、交番磁界)の影響が候補に挙げられているが、直接的にその影響を調べることは問題が多いため、その代わりに試験的にこのような検討を行ってみた、と述べている。その結果、地磁気が商用周波磁界の効果の修飾因子である可能性を示す証拠が若干見られたものの、限定的であり、統計学的に有意ではなかった、と報告している。

研究の目的(著者による)

電力周波数磁界小児白血病についての疫学研究が実施されている異なる国の地磁気が、それらの研究の結果に影響を及ぼしたかどうかを調査するため、プール分析を実施した。

詳細情報

小児白血病についての疫学研究でほのめかされている、マイクロテスラ以下のレベルで有意な影響を生じ得る、磁界と生体系との相互作用についての生物物理学的メカニズムは未だ同定されていない。因果的つながりの候補となるメカニズムは、フリーラジカルに関する生物学的応答に対する磁界の影響である。それは、静磁界の変動ならびに変動磁界からの影響、ゆえに地表面の異なる位置での地磁気の変動による異なる結果を予測している。

本研究は、以下の11報の研究を含む Ahlbom他(2000)及び Kheifets他(2010)のプール分析に基づく:
Feychting他、1993(スウェーデン)、
Verkasalo他、1993(フィンランド)、
Linet他、1997(米国)、
Michaelis他、1997(ドイツ)、
McBride他、1999(カナダ)、
英国小児がん研究グループ、1999(英国)、
Schüz他、2001(ドイツ)、
Kabuto他、2006(日本)、
Malagoli他、2010(イタリア)、
Kroll他、2010(英国)、
及び Wünsch Filho他、2011(ブラジル)。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
集団 1 磁界ばく露 ≥ 0.3 µT、0.4 µT及び地磁気

調査対象集団

統計学的分析方法:

結論(著者による)

結果は、変動磁界の研究における地磁気による影響の改変について、不確かさの幅が広く、統計的に有意ではない、限定的な証拠のみを示した。

研究の限界(著者による)

手法上の疑問があるブラジルの研究を除いて、入手可能な全ての研究は緯度が比較的狭い範囲にあり、それゆえに地磁気もそうだったため、本分析は限定的である。調査した国々の間での地磁気の広がりは、一つの国の中での地磁気の一般的な乱れよりも大きくなかった。

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