研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[小児の急性リンパ芽球性白血病のリスク要因としての架空高圧送電線の近くでの居住:症例対照研究] epidem.

Living near overhead high voltage transmission power lines as a risk factor for childhood acute lymphoblastic leukemia: a case-control study

掲載誌: Asian Pac J Cancer Prev 2010; 11 (2): 423-427

【目的】高圧送電線近傍居住と小児急性リンパ芽球性白血病ALL)との関連を調べること。【方法】症例対照研究である。確定診断されたALL症例の小児300人(1-18歳)は、全てのがん照会指導センターから選出された。少なくとも過去2年間における架空高圧送電線近傍の居住歴についてインタビュー調査を行った。症例群は、性別とおおよその年齢についてマッチングされた300人の対照群と比較された。分析には必要に応じて、ロジスティック回帰分析、カイ二乗検定および対応有りt 検定を用いた。【結果】症例群の方が、有意に送電線により近い住居であった(P<0.001)。症例の半数以上は2種類または3種類の送電線ばく露されていた(P<0.02)。ロジスティック回帰分析によれば、最も近い送電線と住居との距離が600m以上のグループに比較した600m未満のグループのオッズ比は2.61(95%信頼区間:1.73-3.94)であった。123 KV送電線に関する同様の推定値は9.93(同:3.47- 28.5)、230 KV送電線に関しては10.78(同:3.75-31)、400 KV送電線に関しては2.98 (同:0.93-9.54)であった。最も近い送電線と住居との距離が600m増す毎にALLのオッズ比は0.61低下した。【結論】今回の研究は、高電圧送電線近傍居住はALLのリスクであることを強く示している。

研究の目的(著者による)

送電線の近くに住むことが、小児急性リンパ芽球性白血病リスク上昇と関連しているかどうかを調査するため、イランにおいて症例対照研究を実施した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
集団 1 住居から電力線までの距離: 0 - 599m
集団 2 住居から電力線までの距離: 600 - 1199m
集団 3 住居から電力線までの距離: 1200 - 1799m
集団 4 住居から電力線までの距離: 1800 - 2399m
集団 5 住居から電力線までの距離: ≥ 2400m

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
参加者 300 300
統計学的分析方法:

結論(著者による)

急性リンパ芽球性白血病の子どもは対照群と比較して、電力線に有意により近くに住んでいた(P<0.001)。症例の過半数が2つまたは3つの電力線ばく露されていた(P<0.02)。
電力線まで600m未満の距離に住んでいた子どもには、統計的に有意なリスク上昇が認められた(OR 2.61、CI 1.73-3.94)。電力線の種類毎の個別分析は、123kV(OR 9.93、CI 3.47-28.5)230kV(OR 10.78、CI 3.75-31)及び400kV(R 2.98、CI 0.93-9.54)について、リスク推定値の上昇を示した。

著者らは、本研究は高圧電力線の近くに住むことは小児急性リンパ芽球性白血病リスクであることを強調している、と結論付けている。

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