研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[ブラジルのサンパウロにおける磁界へのばく露と小児急性リンパ球性白血病] epidem.

Exposure to magnetic fields and childhood acute lymphocytic leukemia in Sao Paulo, Brazil.

掲載誌: Cancer Epidemiol 2011; 35 (6): 534-539

この症例対照研究では、ブラジル・サンパウロ州における急性リンパ性白血病ALL)に対する60Hz磁界の影響を、屋内での測定及び電力線までの距離に基づいて評価した。この結果、子供部屋での24時間の磁界測定では、0.1μT未満のレベルにばく露された子供と比較して、0.3μT以上のELF磁界のレベルでは、ALLのリスク上昇は認められなかったが、夜間の測定値のみを考慮した場合、統計的に有意ではないリスクが観察された。また、電力線の200m以内に住んでいた子供には、電力線の600m以遠に住んでいた子供と比較して、ALLのリスク上昇が認められた。電力線の50m以内に住んでいた子供についてのリスクは更に高かったが、やはり統計的に有意ではなかった。

研究の目的(著者による)

小児急性リンパ性白血病の発生に対する60Hz磁界へのばく露の影響を調査するため、ブラジルにおいて症例対照研究を実施した。

詳細情報

ブラジルでは白血病の子どもの家族が治療を受ける病院の近くに転居することが一般的なので、診断後に転居した被験者については、診断前に住んでいた住居で測定を実施することがロジスティック的に実行不可能なため、本研究に含めなかった。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 24時間磁界測定の平均: < 0.1 µT
集団 2 24時間磁界測定の平均: 0.1 - < 0.3 µT
集団 3 24時間磁界測定の平均: ≥ 0.3 µT
参照集団 4 24時間磁界測定の平均(転居したことがない子どものみ): < 0.1 µT
集団 5 24時間磁界測定の平均(転居したことがない子どものみ): 0.1 - < 0.3 µT
集団 6 24時間磁界測定の平均(転居したことがない子どものみ): ≥ 0.3 µT
参照集団 7 夜間の磁界測定の平均(午後8時から午前8時): < 0.1 µT
集団 8 夜間の磁界測定の平均(午後8時から午前8時): 0.1 - < 0.3 µT
集団 9 夜間の磁界測定の平均(午後8時から午前8時): ≥ 0.3 µT
参照集団 10 夜間の磁界測定の平均(午後8時から午前8時、転居したことがない子どものみ): < 0.1 µT
集団 11 夜間の磁界測定の平均(午後8時から午前8時、転居したことがない子どものみ): 0.1 - < 0.3 µT
集団 12 夜間の磁界測定の平均(午後8時から午前8時、転居したことがない子どものみ): ≥ 0.3 µT
参照集団 13 住居から最も近い電力線までの距離: ≥ 600 m
集団 14 住居から最も近い電力線までの距離: 200 - < 600 m
集団 15 住居から最も近い電力線までの距離: 100 - < 200 m
集団 16 住居から最も近い電力線までの距離: < 100 m
参照集団 17 住居から最も近い電力線までの距離(転居したことがない子どものみ): ≥ 600 m
集団 18 住居から最も近い電力線までの距離(転居したことがない子どものみ): 200 - < 600 m
集団 19 住居から最も近い電力線までの距離(転居したことがない子どものみ): 100 - < 200 m
集団 20 住居から最も近い電力線までの距離(転居したことがない子どものみ): < 100 m

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 248 2,500
参加者 162 565
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

162人の症例のうち11人、及び565人の対照のうち34人が、0.3µT以上の超低周波磁界ばく露されていた。子どもの寝室での24時間測定から推定した0.3µT以上の超低周波磁界ばく露について、急性リンパ性白血病リスク上昇は認められなかった(OR 1.09;CI 0.33-3.61)。但し、夜間の寝室での測定に分析を限定したところ、同じばく露レベルでリスク上昇が認められた(OR 1.52;CI 0.46-5.01)。転居したことがない症例と対照に限定したところ、夜間のばく露リスクは更に高かった(OR 1.72;CI 0.30-9.87)。
サンパウロ大都市圏に住んでいた症例121人のうち僅か5人、及び対照418人のうち24人が、電力線の100m以内に住んでいた。急性リンパ性白血病リスク上昇が、電力線から100m以内(OR 1.54;CI 0.26-9.12)及び100-200m(OR 1.67;CI 0.49-5.75)に住んでいた子供に認められた。転居したことがない症例と対照に分析を限定したところ、電力線から100-200mに住んでいた子供についてリスクはより高かった(OR 3.68;CI 0.68-19.82)が、。電力線から100m以内に住んでいた子供については変わらなかった(OR 1.52;CI 0.11-21.24)。

著者らは、この結果は全体として、磁界小児白血病との関連に支持を与えていない、と結論付けた。但し、数が少ないことと、ありそうなバイアスがこの結論の強さを弱めている。一部のサブグループにリスク上昇が認められたが、結果は一貫しておらず、不正確で、統計的に有意ではない。

研究助成

関連論文