研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[高圧設備の近くでの居住と子どものがんのリスク] epidem.

Residence near high voltage facilities and risk of cancer in children

掲載誌: BMJ 1993; 307 (6909): 891-895

<目的>妊娠から出産後がん診断されるまでに曝露されたと見られる磁界量と小児がんリスクとは相関するかどうかを調べることを目的とする。<方法>1968年から1986年までに白血病中枢神経系腫瘍或いは悪性リンパ腫診断された15才以下の小児1707名をがん登録で求め、この各症例と性別、年令のマッチした2-5名の対照を計4788名中央人口統計資料で選出した。対象家族との直接接触はせず、子供の出生9カ月前から診断時までに住んだ住居全てを確認した。この家の平均磁界レベルを電力設備からの距離、鉄塔タイプ、年平均電流値から算出した。電気機器の磁界は考慮していない。社会経済的レベル、人口密度、住所変更などの交絡因子を検討し、0.1μT以下は無曝露群、0.8μTまでの磁界レベルと危険比との関連を検討した(図2)、この結果から解析のカットオフポイントを決めた。<結果>①対象者の両親の居住歴を人口登録で追跡し、妊娠から診断までの住所の99.1%を確認(表3)。②計算による平均曝露レベルは、それ以上の曝露を受けた人の%を症例と対照とで比較すると、症例の方が全般的に高い。③3種類のがん及びそれを合わせたカテゴリーについて、幾つかのCutoff pointにおけるオッズ比信頼区間を求めた(表4)。≧0.4μTでのOR比は5.6 (1.6-19)であったが、≧0.25μTではOR比は1.5(0.6-4.1)である。一方、悪性リンパ腫は≧0.1μTで比較すると、OR比は5.0(1.0-25)で有意差が見られた。④積算磁界曝露量は症例の方が高かったが(図3)、がんリスクとの有意な相関は見られなかった。⑤社会経済レベル、人口密度、住所の変更等の交絡因子の影響は見られない。

研究の目的(著者による)

高圧設備の近くでの居住が小児がんリスクを高めるかどうかを調査するため、デンマークで症例対照研究を実施した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 ばく露せず
集団 2 磁界強度: < 0.10 µT
集団 3 磁界強度: ≥ 0.10 µT
集団 4 磁界強度: 0.10 - 0.24 µT
集団 5 磁界強度: ≥ 0.25 µT
集団 6 磁界強度: 0.10 - 0.39 µT
集団 7 磁界強度: ≥ 0.40 µT

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 1,707 4,788
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

デンマークの子どもの約0.5%が、磁界が0.1µT以上の住居に住んでいた。1945年以降、デンマークでの電力消費は30倍に増加したが、小児がんの発症率はほとんど変わらなかった。
3つの小児がん全ての組合せと、磁界強度が0.4µT以上の高圧設備からの磁界へのばく露について、有意なリスク上昇が認められた。0.25µTでは有意なリスク上昇は認められなかった。この知見に基づき、著者らは、50Hz磁界によって生じる可能性のある小児がんの比率は小さいはずである、と結論付けた。

研究助成

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