研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[磁界と小児白血病のプール分析] epidem.

A pooled analysis of magnetic fields and childhood leukaemia

掲載誌: Br J Cancer 2000; 83 (5): 692-698

【背景と目的】これまでの研究から、商用周波磁界小児白血病の関連が示唆されている。そこで、最も新しい研究1件を含む9件の研究で得られている個々のデータに基づいたプール分析を行う。【方法】 24時間ないし48時間の磁界測定または磁界計算値を用いた研究を分析の対象とした。データ分析の方法は事前に具体的に決定した。ばく露の定義が同じ各研究のデータを利用することで対象者の数が多くなり、ばく露レベルの高い区分におけるリスク推定値の精度向上が可能になった。居住環境における磁界ばく露レベル< 0.1μTを参照群として相対リスクを算出した。【結果】磁界ばく露レベル推定値が< 0.4μTであった小児白血病症例群3203人とその対照群10338人において観察されたリスク推定値はいづれも「影響なし」に近いものであったが、磁界ばく露レベル推定値が≧ 0.4μTであった症例群44人とその対照群62人での統合された相対リスク推定値は2.00 (95%信頼区間:1.27-3.13、P値 = 0.002)であった。潜在的交絡因子の調整を行っても、結果に目に見える変化はなかった。まとめ:家庭におけるばく露レベルが< 0.4μTであるのは小児の99.2%であるが、そのような小児においてはリスク上昇なしと推定された一方、ばく露レベルが≧ 0.4μTである0.8%の小児においては約2程度の相対リスク推定値であった。これが無作為の変動によるものであったとは考えにくい。何故このようなリスク上昇が見られたのか、その原因は不明であるが、選択バイアスがある程度、上昇の原因になっているかもしれない。

研究の目的(著者による)

50-60Hz磁界へのばく露小児白血病との関連を調査した。この目的のため、カナダ(McBride et al.)、デンマーク(Olsen et al.)、フィンランド(Verkasalo et al.)、ドイツ(Michaelis et al. )、ニュージーランド(Dockerty et al.)、ノルウェー(Tynes et al.)、スウェーデン(Feychting et al.)、米国(Linet et al.)、及び英国(UK Childhood Cancer Study Investigators)で実施された九つの研究からの一次データに基づくプール分析を実施した。
第二に、社会経済的状態、転居、都市化のレベル、戸建/非戸建住宅、交通排ガスのレベルの交絡因子についての調整が、結果を変化させるかどうかを分析した。
第三に、組合せたデータについて、いわゆるワイヤ・コード・パラドックス(磁界の代用尺度とがんとの関連の方が、直接測定値とがんとの関連よりも強い)を調査した。

詳細情報

24時間または48時間の磁界測定、あるいは界の計算によってばく露が評価された、最近の全ての研究を含めた。研究間のデータを可能な限り一貫させるため、各々の症例(及び対応する対照)について、診断前の最後の一年間の平均ばく露を、一次データに基づいて計算した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (相対リスク(RR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
集団 1 測定した磁界の幾何平均:< 0.1 µT
集団 2 測定した磁界の幾何平均:0.1 - 0.2 µT
集団 3 測定した磁界の幾何平均:0.2 - 0.4 µT
集団 4 測定した磁界の幾何平均:≥ 0.4 µT
集団 5 計算した磁界:< 0.1 µT
集団 6 計算した磁界:0.1 - 0.2 µT
集団 7 計算した磁界:0.2 - 0.4 µT
集団 8 計算した磁界:≥ 0.4 µT
集団 9 測定及び計算した磁界:< 0.1 µT
集団 10 測定及び計算した磁界:0.1 - 0.2 µT
集団 11 測定及び計算した磁界:0.2 - 0.4 µT
集団 12 測定及び計算した磁界:≥ 0.4 µT
参照集団 13 Wertheimer-Leeperの配線条件:地下 + 非常に低い
集団 14 Wertheimer-Leeperの配線条件:一般に低い
集団 15 Wertheimer-Leeperの配線条件:一般に高い
集団 16 Wertheimer-Leeperの配線条件:非常に高い

調査対象集団

調査規模

タイプ
合計 3,247
その他:

急性リンパ性白血病の症例2704人(83%)

統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

0.4µT以上の推定磁界ばく露された子どもは僅か0.8%であった。0.4µT未満の居住環境磁界レベルでの小児白血病リスク上昇の証拠は認められなかった。居住環境磁界が0.4µT以上の子どもについては、統計的に有意な相対リスク推定値2が認められた。この結果は、潜在的交絡因子の調整後も変わらなかった。著者らは、いわゆるワイヤ・コード・パラドックスの存在の証拠を見出さなかった。

研究助成

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